ソフトバンクが3.3兆円でARMを買収することを発表しました。
ARMはiPhoneやAndroidといった、ほとんどのスマートフォンに使われているプロセッサーの基本的な部分を設計している会社です。
パソコンのプロセッサーのほとんどを設計、製造、販売しているインテルとは少々立場が異なる会社です。
まず、このARMとインテルの違いを説明しましょう。
ARMとインテルの違い
しかし、ARMは設計しかしていません。設計した物を他の会社にライセンスしているだけの会社です。この設計はIPコアなどと言われています。
IPコアをライセンスされた会社は、ARMのIPコアに、自社独自の機能を組み込んだオリジナルのチップを開発し、製造して販売します。
例えば、スマートフォン用のチップで強いクアルコムは、ARMから受けたライセンスを元に無線機能などを組み込んだSnapdragonを開発します。Snapdragon自体はチップ製造を請け負うTSMCやサムスン等が担当し、製造された物をクアルコムがスマートフォンメーカーに販売します。
サムスンやアップルもARMのIPコアのライセンスを受けて、自社のチップを開発しています。
すべて自社で行っているインテルと違い、ARMが基本的な設計だけして、それを使って各社が独自にチップを製造しています。
モバイル市場を独占へ
このARMのIPコアを採用したモバイル向けチップがスマートフォン普及に合わせ続々と登場しました。事実上、ARMはこういった小型製品向けチップで標準的に使われるようになっています。
スマートフォンやタブレットだけでなく、ARMのIPコアを使ったチップは各種センサーや各種電子機器にも多数搭載され、今後もそれは増加すると予想されています。
2015年のパソコンの出荷数は3億台程度、スマートフォンは14億台程度です。
この台数は今後伸び悩みが予想されています。
一方で、ARMのチップ出荷数は148億個です。
スマートフォンで実質標準的に使われているARMの10倍のチップが世の中で出荷されているということになります。スマートフォンやタブレットだけでなく、様々な電子機器にARMのIPコアを利用したチップが組み込まれていることがこの出荷数からわかると思います。
IoTでARMはさらに拡大へ
これは今後さらなる成長が期待され、ARMの予想では2020年に700億個を超えると予想しています。
例えば、車には様々なセンサーや電子機器がすでに多数組み込まれていますが、これがさらに増え、ARMのリッチな機能で相互に接続されるようになります。より詳細なデータをリアルタイムに取得し、車の中で処理できるようになると、安全性能や燃費が向上するなどと言われ、将来的には自動運転にもつながります。
また、照明のスイッチといった身近な電化製品にも組み込まれるようになり、様々な機器がインターネットにつながるようになります。
それがIoTと言われている世界です。
世界中のあらゆる物がインターネットにつながるIoTの時代には、ARMのようなチップが必要になります。
このような需要の予測から700億個という数字が出ているわけです。
この急成長が予想されるARMをソフトバンクが買収して、今後のパラダイムシフトに備えようとしています。
ソフトバンクは何をするのか
孫正義氏が買収に関する会見を2016年7月18日に行いましたが、この会見の中で、ARMを買収して具体的に何を始めようとしているのかは語られませんでした。
そもそもIoTではどうなるとかいろいろな予測はありますが、インターネットがそうだったように、初めにいろいろな予測が語られても、その予想を超えて進化していったのがインターネットでしょう。
それと同じようにIoTも、現在の予想以上に社会を変革させる可能性を秘めており、それに備えたいのでしょうか。
そもそもARMが今後も市場を独占出来るのかはわかりませんが、ソフトバンクのIoTは今後どうなっていくのでしょうか。
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