ITライター上倉賢のAll About

IT系ライターによる日常

ようやくまともになりつつある日本の音楽チャート

2014年の12月にCDの販売枚数は流行歌の指標としてはピント外れなっていることを、こちらの記事で指摘しました。

allaboutkamikura.hateblo.jp

2015年末になって音楽ジャーナリストの方も、現状の音楽業界を分析した記事をこちらで寄稿したようです。

gendai.ismedia.jp

この記事の後半では、流行歌の生まれ方が変わりつつあり、2015年に流行したのが2014年にリリースされた曲だということを指摘しています。

これは、すでにCDというフォーマットが事実上消滅し、メディアの売上げが重要視されていないアメリカ市場では昔から現れている現象です。本当のヒット曲はリリースされてから数ヶ月かけて徐々にチャートの順位を上げて数ヶ月間上位にとどまります。

2014年のアメリカの各チャートで上位となったKety PerryのDark Horse、Pharrell WilliamsのHappyも2013年にリリースされた曲で、ゆっくりとチャートの順位を上げ、数ヶ月総合チャートの上位を維持したことで、2014年の年間チャートという結果になりました。

徐々に浸透した例としては、2015年のグラミー賞でRecord of the YearとSong of the Yearを受賞したSam SmithのStay with Meもいい例となります。

これは、2014年4月にリリースされた曲で、イギリスはもちろん、アメリカでも2014年夏から年末にかけてヒットしました。リリースされてから数ヶ月かけて徐々に浸透し、しばらく上位を維持することで年間のヒット曲となりました。

日本ではアメリカでヒットしている曲をテレビ番組のBGMに使い始めるなどして、浸透が始まりますが、ラジオでかかり始めたのは、2015年になってからだと思います。洋楽がよく流れるJ-Waveでかかっていたの2015年冬頃だと思いますが、海を越えて日本に伝来するまで、海外でのヒットから数ヶ月かかりました。

この頃、Sam Smithの曲ではStay with Meと同じアルバムに入っていましたが、9月にシングルとしてリリースされたI'm Not the Only Oneがヒットしており日本との差が如実に表れていました。

2015年に欧米でヒットした曲も同じで、Ed SheeranのThinking Out Loudは2014年9月、Mark Ronson featuring Bruno MarsのUptown Funkは2014年11月にリリースされました。 

逆に、多額費用をかけてプロモーションしているような場合は、リリース直後にチャートは急上昇しますが、すぐに急下降します。

このような状況は、欧米の状況を見る限り、One Directionのようにすでに売れていて固定ファンが待っているような場合によくあります。それでもチャートのトップに行くことはまれで、10位程度に届くかどうかと言うところのことが多いです。

コレクターズアイテムになる物理メディア、デジタルダウンロード、動画配信で急上昇するため、総合チャートではそこそこの位置に行くが、それ以外のカテゴリでは上位に食い込めず、急下降します。

急上昇し、そこそこヒットが続くようなのはJustin Bieberくらいでしょうか。

このように本当にヒットする曲は固定ファンだけの人気ではなく、幅広く支持され、物理メディア、ストリーミング、ラジオその他で実際に頻繁に聞かれるようになる必要があります。ここまで行くのには少なくとも数ヶ月間は必要です。その代わり、地道に上がっていった曲の多くは、数ヶ月間はチャートの上位をキープし、その年の流行曲として多くの人が認識するようになります。

日本の場合、固定ファンが特典目当てで大量に物理メディアを購入し、ランキングは毎週のように入れ替わり、それぞれの曲はファン以外は誰も知らないという状況でした。

www.billboard-japan.com

多くの指標から総合的に順位を決めているBillboard Japanの年間チャートは、ある程度現状を表しているかもしれません。

しかし、ストリーミングが本格的に始まったのは2015年ですし、YouTubeで公式に配信されている動画もかなり限られるなど、まだまだ欧米と同じようには行かないようです。

今後必要になるのは、各曲のデジタルダウンロードでの販売、ストリーミングサービスへの提供、YouTube等へのミュージックビデオの配信となります。

ほとんど全ての曲がここに対応するのにあと何年かかるでしょうか。

最新・音楽著作権ビジネス ~原盤権から配信ビジネスまで

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