ITライター上倉賢のAll About

IT系ライターによる日常

AI PC向けSoCのバッテリー駆動時間比較 2024年後半版

AI PCというのはAIが使えるPCという意味のマーケティング用語ですが、このAI PCと呼ぶには使用しているSoCの機能が一定以上ある事が目安となっています。

そのあたりの基本的な情報と、この世代で一気に向上したバッテリー駆動時間を解説します。

AI PCとは

AI PCとは従来のPCの機能に加えてAI関連機能もPC内で利用出来るPCです。

当然ながらAIしか使えないわけで無く、従来のPCでもクラウドにアクセスすればAI機能は使えますが、PC内でAI機能が完結出来るPCです。

クラウドで使用するAI機能は、利用料金が別途かかったり、インターネット接続が必須とか、利用に制限があり、データをクラウドに送る必要がありセキュリティ上のリスクもあります。

PC内で使えるAI機能はクラウドに比べると異なりますが、様々なソフトウェアがAI機能を取り込んでおり、従来は面倒な作業が必要だったことも、AIが自動的にPC内だけで行うようなケースも増えてきます。わかりやすいのが適当に描いたイラストを一瞬で清書するような機能です。

AI機能がPC内だけで完結して利用出来るようになることは、今後のPCの活用で非常に重要な意味を持ち、今後のPC選択ではAI PCを選ぶのが当たり前の選択肢となります。

AI PCのAI性能の定義

AI機能をPCで利用出来るPCはどう定義するかによりますが、バッテリー駆動出来る気軽に扱える薄く軽いPCでAI機能を扱えるPCです。
例えばNVIDIAGPUを搭載したゲーミングPCやワークステーションでもAI機能は以前から利用出来ます。これはAI性能も非常に高いですが、高価でバッテリー駆動時間に問題があり、大きさや重量面でも問題があります。

薄型軽量の製品でAI機能を使えるPCが2023年から順次発売されています。
2024年前半までに発売されていたAI PCももちろんAI機能は使えますが、AI機能を使うための性能基準がはっきりしていませんでした。

2024年5月にMicrosoftWindows OSで利用出来るAI機能のCopilot+ PCを発表しました。この動作要件としてSoC内のNPUの性能を40TOPS以上と設定しました。

SoCとは中心的な演算機能のCPU、グラフィック機能のGPU、AI機能のNural Processing Uniteの略のNPUを統合したSystem on Chipの略で、従来はそれぞれ別のチップだった物を統合した低消費電力動作するチップです。

40TOPSとは1秒間に40兆回のAI関連の演算が出来る性能という意味です。

2024年末現在のAI PCはこの性能を満たした、WindowsならCopilot+ PCとして販売されている製品を購入することが目安となります。

40TOPS以上を実現するSoC

NPUの性能が40TOPS以上のSoCは2024年の正式発表順に、Qualcomm Snapdragon Xシリーズ、AMD Ryzen AI 300シリーズ、Intel Core Ultra Series 2があります。

NPU性能は

それぞれのNPU性能は

Qualcomm Snapdragon X - 45TOPS
AMD Ryzen AI 300 - 50TOPS
Intel Core Ultra Series 2 - 48TOPS

となっており、違いはありますが、はっきり言うとどんぐりの背比べの状態です。
NVIDIAGeForceなどは2024年現在で数百TOPSであって、数TOPSの違いではほとんど影響を受けないですし、細かくみるとNPU自体も何の演算が出来るかは異なっています。
また、今後の急激にNPU性能は伸びるので、現時点でNPUのTOPS値の小さな違いを比較してもあまり意味が無いです。

比べるならSoC全体の性能を確認しよう

例えば、IntelはNPUだけでなく、CPUとGPU含めたSoC全体のTOPS値は120TOPSとしています。
ソフトウェア側で必要とされるAI機能はそれぞれ異なり、主にAIの推論で多用される整数演算性能だけでなく、GPU側の浮動小数点演算機能などを活用する場合などにより性能が高いことをアピールしています。
AMDはその浮動小数点演算のFP16よりも高性能が期待できる、新しいBlock FP16という演算機能を実装したりしています。

AI関連機能だけでも最低基準は満たしつつ、それぞれのアプローチがあり、今後ソフトウェア側がどうこれを活用していくかによって、どのNPU、SoCがよりAI関連で良い性能を出せるかは変わっていきますが、AI関連は状況がすぐに変化するので、次の世代ではまた別の見方が必要になります。

SoCの違いとバッテリー駆動時間

AI関連以外で、PCとしての基本的性能で2024年から特に注目されるのがバッテリー駆動時間です。

QualcommのSnapdragon Xシリーズは、低消費電力動作が重要なスマートフォン用のSoCから発展したもので、バッテリー駆動時間が長いことが特徴です。

IntelのCore Ultra Series 2(200V)は、これに対抗し、従来製品からワット当たりパフォーマンスを大幅に向上させた製品です。

AMDRyzen AI 300シリーズも機能向上していますが、他に比べるとワット当たりパフォーマンスはそこまで高くはありません。

SoC違いをカタログスペックでバッテリー駆動時間を比較する

SoC以外は同一の仕様の製品でSoCの違いでメーカー公表のバッテリー駆動時間がどうなっているかを調べます。ここで書いている駆動時間は各社が公表しているビデオ再生での駆動時間で、普通に使った場合の、最も長時間使えるバッテリー駆動時間となります。

DELL XPS 13 Laptop

Core Ultra 7 155H 18時間
Core Ultra 7 256V 26時間
Snapdragon X Elite X1E-80-100 27時間

ASUS Vivobook S 15

S5507

Snapdragon X Elite 12C 18時間

M5506

AMD Ryzen AI 300 17時間
AMD Ryzen 8000 14時間
AMD Ryzen 7000 14時間

ASUS Vivobook S 14 S5406

Core Ultra 5 226V 27時間
Core Ultra 9 185H 16時間

Acer Swift 14 AI

Core Ultra 7 258V 29 hours
AMD Ryzen AI 9 365 27 hours
Snapdragon X 26hrs

SoCの進化によるバッテリー駆動時間

AMD Ryzen AI 300シリーズは、前世代のRyzen 8000シリーズに比べてバッテリー駆動時間が向上していることがわかります。
Intel Core Ultraもシリーズ2(200V)から前世代のシリーズ1に比べて大幅にバッテリー駆動時間が向上しています。

Intel Core Ultraシリーズ2はSnapdragon Xと比較しても同等程度のバッテリー駆動時間となっていることがわかります。
AMD Ryzen AI 300はそれに比べると短いようですが、そこまで見劣りはしていないので、各社そこまでの差が無いのかもしれません。

IntelAMDどちらも前世代に比べて大幅に向上しており、単純にAI機能ではなく、バッテリー駆動時間が長いPCとしても注目です。