AI関連の機能が快適に使えるPC(パーソナルコンピュータ)が、2024年末に各社から出そろいます。
2024年末に出そろうのは、主に個人向け製品です。今後、2025年にかけて企業向け製品や、製品バリエーションも増えて行きますが、2024年末の段階でAI PCの元になるSoCが出そろいました。
PCメーカーによっては対応機種の投入が遅れるところもありますが、AI関連の製品という意味では機能的に出そろうので、購入を待つ必要はありません。
AI PCとは何か
2024年現在で一般的に言われているAIとは、AIの中の機械学習(Machine Learning)の中の、ディープラーニング(Deep Learning)関連でのAI機能です。
AI PCとはこのディープラーニング関連のAI機能が快適に使えるようになったPCというようなことです。従来のPCでもAI関連機能の利用は可能でしたが、AI機能では膨大な演算が必要で、その演算に対応する機能をPCに搭載したというような意味となります。
つまり、通常のPC機能に加えて、AI機能もPC内で処理できるようになったので、より高性能なPCというような意味で業界がマーケティング的に「AI PC」という名称をつけ始めたのが2023年頃からになります。
繰り返しになりますが、この「AI PC」は、今までのPCで出来たことはそのまま使えます。
AI PCの機能差
AI PCは今までのPC機能に加えて、AI関連機能がPCに追加されたような形です。
このAI関連機能は製品毎に機能差があります。
前述したディープラーニングには学習(training)と推論(inference)というフェーズがあります。
一般的に学習は大量のデータを演算して言語モデルのトレーニングを行います。この大規模な言語モデルをLarge Language Models、LLMと言います。一般的に学習は大規模なデータセンターなどのサーバー側で行います。
一般ユーザーが実際にAIを使うというのは推論です。
画像を生成したり、チャットボットで自然な会話をAIで行っているのは、学習でトレーニングした大規模言語モデルから推論して出力された物です。
学習と推論では行っている演算内容が全く異なり、学習はより高精度な演算、推論では精度はそこまで必用では無く、それぞれの演算内容も異なります。
例えば学習ではFP16という反精度浮動小数点演算を行い、推論ではINT8という8ビットの整数演算を大量に行ったりします。
実際にはAI関連の演算では他にも様々な演算が行われますが、このFP16、INT8などの大量の演算に特化した機能をPCに搭載しているのがAI PCとなります。
この機能を近年ではNPU(Neural Processing Unit)と呼び、主に推論での性能の指標となるのが1秒間に何兆回の演算が出来るかのTOPS(Tera Operations Per Second)で、2024年にAI PCと呼ばれる製品は40 TOPS以上、つまり、1秒間に40兆回のAI関連演算が可能となっています。
このTOPS値が各製品で異なったり、INT8なのかINT4なのかなど、対応する演算がそれぞれ異なります。
AI PCの種類
一般的にAI PCと呼ばれている物はいくつかの種類があります。
Copilot+ PC
MicrosoftのWindows 11でAI関連機能を使える製品で、一定の基準を満たしたAI PCで利用出来る機能です。
Windows内にAI機能が組み込まれ、AIを使った様々な機能を使えるようになります。
NVIDIAのGeForceは大規模なAIサーバーなどに使われているのと同じ機能を搭載しており、AI機能自体は非常に高いです。
一般的にゲーミングPCやワークステーションで採用されていますが、高性能ですが消費電力が高いという問題もあります。
TOPS値だと500以上の物もあり、一般のAI PCの数倍以上の性能となっています。
このGPUによるAI関連機能のサポートは今後進展し、Copilot+ PC機能も対応するようです。この場合は、例えば2023年頃に購入したゲーミングPCがCopilot+ PC機能に対応するようなこともあり得ますが実際には不明です。
Copilot+ PCではないWindowsのAI PC
一般的に2024年前半までに発売された製品で、NPUのTOPS値が40以下の製品です。
TOPS値が低いだけで、AI機能が使えないわけでは無く、パフォーマンスが若干低いだけです。
Macはどうなのか
Macに使われているApple SiliconにもNPU機能は搭載されていますが、Appleは2024年前半現在でAI PCとは謳っていません。
機能としてはあり、利用は出来、2024年秋に提供されるmacOS SequoiaではApple Intelligenceという機能を搭載し、本格的にAI関連機能をOSに搭載します。
SoCによる違い
SoCとはCPU、GPU、NPUなどが一つになったSystem on Chipの略です。
従来と同じx86系のIntelのCore Ultra、AMDのRyzenシリーズが、AI PCのSoCです。
それとは別にスマートフォンなどで使われているARM系のQualcommのSnapdragon Xシリーズもあります。
2024年夏以降に発売された40TOPS以上のx86系SoCは、IntelのCore Ultra Series 2、AMDのRyzen AI 300シリーズです。
ARM系のQualcommのSnapdragon Xシリーズは先行して6月から発売になっています。
それぞれx86かARMかのアーキテクチャの違い、CPU性能の違い、GPUの違いにくわえてNPUの性能が異なります。
どのAI PCを選ぶべきか
もしもAI PCを、自分で本格的にAI関連の開発や研究等の用途で使いたい場合、NVIDIAのGeForceなどを搭載したゲーミングPCやワークステーションが適していますし、クラウドなどを組み合わせる必用もあります。
一般的にAIは、提供された機能を使う方が多いと思います。何らかのAI関連ソフトを活用して、業務を効率化したいとか、AI機能を使って何かを創作するような用途です。
その場合は、その製品で使えるAI機能が十分かなどを確認の上で、PCとしての機能を比較検討します。
AI性能自体は、今後も新しいSoCが出てくれば一気に向上しますが、その向上幅は従来のCPUなどの性能向上よりも高いです。何年か待ったら落ち着くという事も当面見込めないので、今買って、数年使い、数年後により性能の高い物に乗り換えるという形になります。この乗り換えサイクルはかなり短くなるでしょう。
その頃にはソフトウェア含めた、より使い勝手の良い物が登場していると期待しましょう。
唯一待つ必要があるのは特定メーカー、ブランドで自分が狙っているSoC搭載モデルが出るのを待つようなケースです。
例えばA社のBブランドの、CのSoCを搭載しているモデルが出てこないから、発売されるのを待つようなケースになります。この場合、2025年前半まで待たないといけないようなケースも出てくるでしょう。
具体的なAI PCの選び方
大きく分けるとアーキテクチャで2つ、SoCで3つに分けられます。Macを入れるとSoCでは4つです。
QualcommのSnapdragon Xシリーズ搭載モデルは、バッテリー駆動時間が従来のIntelやAMDのSoC搭載より長いなどの特徴があります。CPUのアーキテクチャが従来のx86とは変わるので、従来のソフト、周辺機器との互換性問題があります。
IntelのCore Ultra Series 2(200Vシリーズ)搭載モデルは、バッテリー駆動時間が従来より大幅に改善されており、Snapdragon XよりCPU、NPU性能も高く、バッテリー駆動時間も長いとIntelはしています。
AMDのRyzen AI 300シリーズは、同社の3世代目のAI対応SoCで、IntelのCore Ultra Series 2よりも先行して発売されています。
2024年中旬現在、従来のPCとの互換性を考えると、Intel Core Ultra Series 2か、AMD Ryzen AI 300 Series搭載モデルを選ぶのが無難です。
バッテリー駆動時間が長いのはIntel Core Ultra Series 2です。
バッテリー駆動時間が長いAI PCを選ぶならIntel Core Ultra Series 2搭載モデルを選ぶのが無難でしょう。
Snapdragon Xシリーズ、AMD Ryzen AI 300 Seriesを選ぶ場合は、各製品の機能が自分の利用環境に、より適しているかで選ぶのがいいでしょう。